スマトラ沖地震・HBSスリランカ・津波被害緊急支援室
福岡日雙上人よりスリランカ現地支援活動報告
12月26日、スマトラ沖で発生した地震と津波の被害。妙深寺では、ご住職が渡航されたご縁の深い彼の地の被害の深刻さを想定し、いち早く年末に「津波被害緊急支援室」を設置し、ホームページや各部署を通じて、幅広く支援活動を推進してまいりました。
中越地震と今回の津波被害に対する義援金は、ホームページを通して15万円、総計で100万円を超える志をお預かりしました。
当山ご住職は、地震発生から現地のスリランカご信者さま方と電話やメール、ファックスを通じて連絡を取られ、被害状況を伺ったり、励まし続けられたりしておりました。今後の支援活動については、全て福岡御導師にお伺いし、具体的な活動のご指示をいただきますが、とにかく各寺院でできる限りの支援を呼びかけている間に、福岡御導師は急遽スリランカの現地へ奥さまと共に渡航を決行されました。その挺身の支援活動に頭が下がるばかりです。
この間、妙深寺では毎朝夕のご祈願、ご回向、全御講席でのご祈願を続けてまいりました。そして1月18日に福岡御導師はご無事に帰国をされ、ここに御導師からの報告が到着し、義援金に対する御礼も含め、ご披露をさせていただきます。
福岡御導師:一月十日、スリランカに向け出発し、昨日(十八日)帰国いたしました。その間、寒修業中でございますのに、寒修業の参詣をご無礼し、皆様に勝手をいたしました。
この時期に行かせていただいて良かったと思っております。テレビや新聞の報道で刻々と向こうの様子は報じられておりますので、皆さんも大体の様子はご存じだと思います。スリランカに関して申しますと、今のところ三万一千人の方が今回の津波で亡くなっておられますが、これは死亡が確認された方の数であり、それに倍する約四万人の方がいまだ行方不明。七万人以上の方がスリランカだけでも犠牲になっておられる。
スリランカの東から南側に、スマトラから直接波が当たり、こちらの被害が大きかった。佛立宗が弘まっているコロンボからその一帯は、島の反対側にありますから、比較的被害は少なかったのですが、コロンボから南のカルタナというところまでは相当大きな波が押し寄せました。
その佛立宗のご信者さんがいる地域のカルタナには、カルタナ組というグループがあります。その地域の市庁舎に知事を訪ね、その応接間で色々お話しをしました。そこには白板が掲げられており、カルタナ地区の各地区の被害状況の数字が並んでおりました。私の訪れた時点で一五八一人の死亡、四五六の家が津波で全壊という数字が出ておりました。また、その地域の被災の様子、津波が押し寄せた日から翌日にかけての状況が、地元の方が撮ったビデオで映し出され、それを見させていただきました。テレビで報道されているものとはまた生々しさが違います。海岸に遺体が累々と横たわっている。そういう状況でした。
スリランカでは九〇%の方が漁業に従事されており、漁業は大打撃を受け、特に子どもが犠牲者になっていました。みんな津波という言葉は知っているが、津波というものがどういうものなのかを知らなかった。昔、スリランカの歴史の言い伝えでは、二千数百年前に大きな津波が一度あったということですから、それ以来津波という災害がなかった。あの地震があって津波が押し寄せて来るなんてことは夢想だにもしなかった。
最初にカルタナ地区にも大きな波が押し寄せ、海岸地帯の家では床上ぐらいまで波がきたそうです。それが今度は引きましたら波打ち際から沖に向けて二キロ位ずっと海岸になったそうです。波が引き、子どもが喜んで、打ち上げられた魚を捕りにみな沖に出たわけです。そこへ第二波。これが大きくて、それに皆さらわれ、場所によっては、海岸から五メートル位高いところに道路が走っているのですが、そこも冠水している。私が行きましたときはもちろん遺体は取り除かれておりましたが、舟が道路の真ん中に打ち上げられて、そのままになっていました。
現在スリランカには、佛立宗のご信者さん、御題目を唱えられている方が約六千人ほどおられます。そういう方たちの状況が非常に心配でした。しかし、カルタナ地区で亡くなった方の中にご信者さんは入っておりませんでした。ご信者さんの死亡者はゼロということで、これは何よりも不幸中の幸いだと思います。ただカルタナ地区のご信者さんの中でも多くの方が自宅を失ったり、兄妹、親戚を無くしておられます。こういう方々にはもっと手厚い支援をしてあげなければいけないと思うのですが、取り急ぎ行きましたので、第一回目の支援として、ごく僅かな額ですが避難所を訪ね、励ましたり、慰めたりさせていただいて、共にお看経をさせていただいたりしながら、回ってまいった訳です。そういう中で、色々と聞くお話の中に、やはりご信心をなさっていたお陰で命拾いをした、助かったという御利益の体験談をたくさん聞かせていただきました。
コロンボから内陸に八〇キロ程入ったところにケイグルという町があり、そこにも佛立宗のグループがあります。学校の先生が多いのですが、リーダーのヘラスさんという、ご自身では日本文学を専攻されている学校の先生が、ご夫婦で子供さんと二人ほどの親戚の方と一緒に、内陸部でなかなか海岸に行くことが少ない、それで南半球ですから夏休み休暇を利用してビーチに車でピクニックに行こうということになった。あの地震があった十二月二十六日の朝早くゴールというコロンボから南に下ったスリランカの一番南にある町。ここはいわゆるリゾート地で、外国からも観光客がたくさん行っている地域。そこに向けて朝早く出発する予定だった。ところが出発する準備に手間取って、予定が一時間余り遅れてしまった。そして、そのゴールに向かっている途中のカルタナまで来ましたら、何だかただならぬ雰囲気。道が冠水して交通渋滞を起こして前に進めない。これは今日は何が起きているか分からないので、おかしいと思って引き返した。後で聞いたら大津波が押し寄せて、たくさんの方が亡くなっていると。ですから、予定通りヘラスさんがケイグルを出発してゴールに向かっていると、ちょうど津波が押し寄せた時にそのゴールの町に着いていたということで、海岸へのピクニックでしたから当然流されてしまっていた。事故の災害の時は自分が命拾いをしたからといって手放しで喜べないのですが、そういう御利益をいただかれた方がおられます。
また、これもご信者さんで、そういう方向に向かって海岸線をドライブしておりましたら、ふと海岸のそばにあるブティックに寄って買い物をしようということになって、車を駐車し、二〜三メートル上にあって階段で上がるようになった所にある、そのブティックで買い物をしているときに、津波が押し寄せまして、乗っていた車は海に流されてしまった。しかし、たまたまその時に車を降りて高所に上がっていたので助かったという方がおられます。
それからミランダさん。あの方の一番上のお姉さんが、カルタナの海辺でご商売をされている。このお姉さんもミランダさんの教化で三年前からご本尊をお祀りして、朝夕の御題目口唱はずっとされている。この方のおうちも両隣の方が亡くなっておられます。ご自身は、第一波の波が来て、波が家の中まで入りそうだった。それで、これは逃げた方が良いということで、高台に避難された。隣は皆残った。その後二十五分後に第二波が来て、さらわれた。これも御宝前のお知らせ、と。家は中の物はみな流されて、全く着の身着のままになりましたが、命があったということ、これも御宝前のお計らいと非常に喜んでおられます。
それからもう一人。この方はご本人は佛立宗に入信されたのですが、ご主人はクリスチャンで、どうもやはり自分の奥さんが佛立宗に入ったことをあまり歓迎されていなかった。奥さんはご信者さんとして親会場にお参りされ、その日も日曜で日曜学校にお参詣され、それに子どもを連れていっていた。クリスチャンのご主人だけが家に残っておられて、この家も海岸縁で、津波がきてご主人だけが波にさらわれて亡くなってしまった。自分達は助かったのですが、そういう形でご主人を亡くされた方がおられました。
とにかく色んな形でご信者さんに犠牲者、死亡者がなかったことが不幸中の幸いであった。しかし、全体には、非常に悲惨な深刻な状態にたっておりますので、さらに支援をさせていただかなければいかんと思っております。皆様には連絡がこちらから行っている間に取れませんで、いろいろご心配をおかけしました。
また、MTVという有力なテレビ局が熱心な支援活動をしており、その局が取材をしたいということでインタビューを受けました。晩のニュースに報道され、そういう形で本門佛立宗という日本の宗教がスリランカに来て支援活動を行っているということが伝わったのはありがたかった。次回行く時には生の番組で放送するので、それに出演して欲しいという依頼を受けました。それは国際的な番組で、米国のCNNという局にも流されて世界的に報道されるということで、佛立宗の支援活動も非常に広く伝えられると思いました。
やはり、今までの日本の色々な援助活動は、世界でも一番額が多いのですが、なかなか評価されない。それは、お金だけ送るからもう一つインパクトがない。顔がみえないんです。やはりこういう場合にも、ただ「お金集めて送る」というやり方より、やはり人が行ってその人たちと出会って、そして支援をする。まして私たちはご信心ですから。スリランカの被災者の方には「私は皆さんにただモノを持ってきたのではありません。何よりの支援はご信心です」と申しました。ということは、この信心を頂いたら、後々これから先にも何が起こるか分からない、そういう時に、色々な形でこのご信心のお陰で御利益を頂くのですから、どうぞ御題目を唱えてくださいと、行く先々で皆様にお勧めし、励まして帰ってきました。
昨日、一月十七日は阪神淡路大震災の十周年の日でありました。ちょうどあれから十年経った時期に、あのころ私たちは色々な方からご支援を受けた訳ですけれど、十年後にこういう形でこちらから支援をさせていただく側に回ってご奉公させていただくことになり、ある意味では御礼のご恩返しがさせていただけたと思います。それに皆様も色々な形で協力をいただいておる訳でございますが、また宗門からの援助金、支援金をお預かりしたら、もう一度また行かせていただきたい。やはりこの時期に行った、しかも妻と共に行ったということが非常に大きな励ましになったようです。どうなることやらと心配でしたが、無事に帰山しホッとしています。これも大きな御利益だと思います。
お陰で無事にご奉公させていただき帰ってまいりました。皆様のその間のご祈願に対し御礼申し上げまして、ご報告させていただきました。
なお、引き続き、「HBSスリランカ・津波被害義援金」の勧募をさせていただきます。
史上最大最悪の災害に、是非ご協力をお願いいたします。
たとえ僅かでも、より多くの方々の善意が集まることで、被災地の方々の大きな精神的支えになります。多くの方のご協力をお願いいたします。
また、私たちは世界に誇る本門佛立宗のご信心を頂いており、ご信心面での支援が最重要です。皆でご祈願させていただきましょう。
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