本物が求められています。
偽物が増え、偽物に溢れた時代が進めば進むほど、本物が求められてゆきます。これからの時代、「本物」でなければ意味がないということに誰もが気づいてゆく時代ではないかと思うのであります。
自分の中に誇れる「本物」を持っているかどうか。自分の生活の中、仕事や家庭、生き方の中に、「本物」があるかどうか。探して確認する必要があります。
心。モノ。上辺だけの、偽りの見せかけの、飾られたものだけに振り回される時代が、さらに加速します。だからこそ、「本物」が求められるのです。
「本物」とは「偽りや作り物ではない本当の物。実物」という意味です。事実ではないことを事実とする「偽物」は、本物に対して使われる言葉です。
恐ろしいことですが、私たちの周りは偽物で溢れているのです。考えてみてください。どれだけ偽物に囲まれているか。偽物を本物と錯覚して生きているか。
私たちが毎日口にする食べ物に偽物があることも露呈しました。牛肉偽装事件に端を発した事件で、私たち消費者はデパートの陳列棚に並ぶ食品の中にも多くの偽物があることを知りました。その後、豚肉でも偽装が発覚し、高島屋ですらウナギの産地を偽装表示していることなどが発覚しました。
厚生省はようやく氾濫する魚の類似名の規制に乗り出すようです。魚屋さんで並ぶ「タイ」「タラ」「ブリ」なども「〜タイ」と類似した名前で並べられおり、見分けがつかない状況。ノリ弁当の上に乗っている白身魚のフライもアメリカナマズと云われ愕然とします。回転寿司ブームの裏側では、ネタを安く仕入れる為にナイル川上流の魚から深海魚までがネタとなり店頭に並んでいます。余りに疑魚を出す店が多くなったことを受け、ある回転寿司のお店では本当の名や原産地を表示し、信頼を回復したいというお店が出てきました。
お年玉を手にして美容整形外科に行く小学生の話を聞きました。誰もが外見の美しさを求めますが、今や人間にとっての本当の美しさが何であるかを語り、教えられる人がおりません。無垢な子供達は、劣悪なテレビ番組で流される手軽な「美」のゲームに見とれ、外見の優劣にのみ惹かれてゆきます。自由な心に奇妙なコンプレックスを生み出させ、さらに不自然な形のコンプレックスを作り出させています。小学生に整形を奨励するような国が、豊かな国と言えるのでしょうか。仮の姿に心を奪われるのも今という時代です。心や魂を磨く人が少ない時代です。
ビジネスの分野でも同じことが起きています。それはベンチャーブームで多くの起業家が出現したのに、「実業」ではなく「虚業」と呼ばれる程、中身の無い偽物が多いとのこと。苦労を知る実業家ではなく上辺だけの虚業家。
広告やマーケティングの手法が発達し、「偽物」でも上手にコマーシャルさえすれば売れてしまう世の中です。しかし、長期に成功しておられる方は、本物を地道に求め、造り、語って仕事をされてきた方々。昨年末、知古の事業家が自殺しました。彼は生来の旺盛な野心と山師的な発想で代理店と番組やイベントを続けてきました。しかし、後で聞けば、彼は仕事を成功させる為に嘘から嘘へと言葉を繋ぎ行き詰まって苦しんでいたということ。偽りの世の中の犠牲者なのかと悔恨の思いも致します。
先日、石川県でお会いした映像芸術家の長谷川章氏に教えて頂いたことですが、昔は「お巡りさんはみんなのためにいる」と言っていた。しかし、二十一世紀になると「お巡りさんはお巡りさんのためにいる」になってしまっている、と。放送局も放送局にとって都合のいい番組だけを流す。最近になって、官僚は国民のためじゃなく官僚のためにいることもハッキリ見えてきた。「動燃」も国の科学技術政策のためじゃなくて、従業員のためにある。しっかりと仕事をして下さっている警察官や官僚の方もおられると思うが、と。
結局、建前だけが表に取り残されて、人間の本性、本音の部分が後ろの方から見え隠れしてしまう。そう考えると多くが「偽物」で、嘘ばかりの世の中に見えてきます。
政治も宗教もそうです。政治家も公の為に、国民の為に存在しているように感じません。宗教家も、僧侶も、その存在意義を見失っているようにも感じます。
全世界のリーダーを自負する、ブッシュ米国大統領は、三十九才の時に、過激なキリスト教伝道師ビリー・グラハムに再洗礼を受け、原理主義的な宗派に改宗しています（イスラム原理主義で驚いてはいけません。キリスト教原理主義は米国南部に今でも根強く残っています）。知らない人は多いと思いますが、ブッシュはダーウィンの進化論を否定する「創造科学」を支持しています。当然キリスト教原理主義、宗教右派は宗教的にイスラエル寄りで、非常に密接な関係があります。このことは米国が掲げる正義やテロ対策の裏側に、「宗教」やオイルマネーが存在していることを如実に示しています。戦争を容認する恐ろしい宗教です。
まるでクリスマスツリーのようにデコレーションされた、上辺の、偽りの宗教が溢れています。本物を装った「偽物」の宗教は、宗教・信仰でありながら人を害する、世界を害するものでもあります。宗教・信仰の「偽物」こそ恐ろしいものはありません。今こそ佛立信心を宣揚すべき時と確信します。
佛立開講一五〇年奉讃の初年度に当たる今年は、私たち佛立宗の信仰が如何に尊く本物であるかの再発見、再確認の年でもあります。
佛立宗の歴史は、仏教の歴史そのものです。様々な文献にその名が示され多くの先師先聖がインド、中国、日本と相承され、最も古い歴史がある仏教根本の宗です。
信心とは「本心」であります。本心とは、正しい信仰の対象たる御本尊に向かう時にはじめて発揚されます。真実の宗教は一つです。御本尊も宇宙に一つのはずです。本物でなければ意味がない時代。しかし、偽物に溢れた時代に生きる私たち。だからこそ、何よりも本物の信仰を実践すべきでしょう。
この一年間、嘘や偽りの生き方、過ごし方にならぬように心掛けましょう。そして、偽物に心奪われる悪癖を戒めましょう。
真実の御法を真心で信じ行じることの大切さを再確認しましょう。本物の時代です。本物の生き方は菩薩の生き方に凝縮されています。
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